2012年8月27日月曜日

大山村塾第3回講演会 高野塾長政談[前]公開します!

先日は、鳩山元総理の講演をお届けしましたが、第2部の塾長政談をお届けします!

〓〓〓 INSIDER No.640   〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
敢えて民主党政権を擁護する
──「大山村塾」での高野政談
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【参考資料】 http://www.the-journal.jp/contents/takano/shasin028_1.jpg
 

  8月18日に開かれた「大山村塾」講演会では、第1部の鳩山由紀夫元
 首相の講演と質疑(前号参照)の後、第2部では高野が「私が考える民
 主党再建案」と題して政談を行った。以下にその要旨を掲げる。

●社会活動家が内閣府参与に

 高野  「私の考える民主党再建案」というやや大仰なタイトルでお話
  ししようと思ったのだが、やや時間が押しているので、ごく簡単に、先
  ほどもちょっと鳩山さんに成り代わって民主党政権弁護論のようなこと
  を言ったが、それを補足して、もしかすると皆さんが今のマスコミ状況
  では余りご存じないかもしれない2~3の事実をお知らせすることに止
  めたい。
 

   先ほど鳩山さんからも「自民党野田派か?」というお話があったけれ
  ども、これは大体誰もが感じていることだ。湯浅誠さんという方がい
  て、時々マスコミにも出るのでご存知かもしれないが、あの日比谷公園
  での「派遣村」を組織した社会活動家で、派遣村の村長から菅さんの時
  に内閣府参与に入って、格差解消の問題、賃金の問題で政策面からも関
  与された。こういうこと自体が、地域末端で働いている活動家がいきな
  り内閣府参与に入って政策作りに関与するということも、彼に限らずい
  くつも起こっていることで、これも余り目立たないが政権が変わったこ
  との1つの成果ではないかと思う。
 

   湯浅さん、今はまた一社会活動家に戻っているけれども、ごく最近の
  雑誌で自分が間近で見てきた3つの内閣の特徴について述べていて、ま
  ず鳩山内閣というのは、従来の自民党政権から最も逸脱していた、と。
  それは、今日も鳩山さんご自身が仰ったが、「居場所と出番」という言
  葉遣いであるとか、その背景にある、やや理屈っぽく述べられたが「新
  しい公共」という概念であるとか、「補完性の原理」、これはヨーロッ
  パで培われてきた社会づくりの基本理念であるけれども、そういったこ
  とが採り入れられて、それをそういう硬い言葉でなくやさしく言ったら
  どうなるのか、鳩山内閣の最初の所信表明の頃にブレーンの方々が頭を
  ひねって、「居場所と出番のある社会」というなかなか面白い表現を
  作ったのだと思うが、それを湯浅さんが評価されている。

●間接支援でなく直接支援

   それから、これは今この3政権のうちに少し薄れてきてしまったけれ
  ども、鳩山内閣が一番重視したのは、家計への直接の支援ということ
  だった。先ほど私は例を出して言ったが、何とか協会、そこで天下りの
  元役人がタップリと先に横取りしてしまって、段々下へ行くほど予算は
  細っていくというのが、これまでの間接支援のやり方だった。天下り制
  度と深く結びついて既得権益を作り上げていた。それを壊そうというの
  が直接支援で、子ども手当も、いろんな議論の末に修正修正になってし
  まったが、子どもの居る家庭に直接支援する、そんなことをしたらバカ
  親父がパチンコ代に使ってしまうぞと自民党は言って、まあそういう
  ケースもあるかもしれないが、途中で中抜きされるのではなくて、当事
  者に直接支援を届ける。

    農業において、これもまだ制度的にうまく整っていると思わないが、
  農家への直接支援、あるいは所得保証、これもヨーロッパで生まれた考
  え方であるけれども、それを日本的に適用しようという。今までだと、
  あらゆる補助金は、そう言っては何だが、農協などを通じて流れて、ま
  ず[つい先年までは]30万人[もいた]農協職員の食い扶持が予算の総
  枠から横取りされる。段々細っていって、残りが本当に農業をやってい
  る農家に届く。極端に言えば残りしか行かない。そういう間接支援の仕
  組みを壊そうとした。こういう点を挙げて、湯浅さんは鳩山内閣を自民
  党路線から最も逸脱しようとしたと定義している。

   次に菅内閣は、それを少し修正して、今までとの中をとるような感じ
  だった、と。鳩山時代に「成長戦略がないじゃないか」と経済界から言
  われて、「強い経済」と「強い財政、強い社会保障」を両立させるとい
  う間をとるような路線をとった。その財界寄り修正路線の中からTPPと
  消費税が出て来た。ただ、東日本大震災の後、菅さんが脱原発を打ち出
  して、これを野田政権も少なくとも言葉の上では引き継がざるを得なく
  なった。その意味では、そういう言葉を湯浅さんが使っているわけでは
  ないが、功罪相半ばというか。そして野田内閣については、極めて短
  く、「さらに保守に傾いて自民党路線と変わらない」と言っている。こ
  れは内閣近くで仕事をしていた方の実感で、私も似たような見方をす
  る。

●セイフティーネットの多重化

    で、この湯浅さんが取り組んだ格差と貧困の問題では、そうは言って
  も少しずつ変わってきたその成果の蓄積がある。湯浅さん自身は「遅遅
  として」というか「着実にと言うべきか」というような表現をしていた
  が、非常に大きいのは「求職者支援制度」の恒久化。要するに、失業保
  険と、何もかも失敗して生活保護を受けるということの間に、いろいろ
  なチャレンジすべき段階があるはずで、その間の支援制度、つまりセー
  フティーネットがヨーロッパなどでは非常に手厚くなっていて、どこか
  で引っかかってまた這い上がってくるチャンスが生まれるように何重に
  もなっている。
 

    日本は会社を辞めた、首になった、倒産した、それで失業保険を貰っ
  て何カ月で切れた。後は何もなくて、どん底まで行ってしまえば生活保
  護。そこをヨーロッパをモデルにしながら何重にもセイフティーネット
  を作っていこうということで、その議論そのものは自民党政権時代に始
  まったけれども、その「7つのセイフティネット」のうちの1つがすで
  に求職者支援制度として実現した。そして残りの6つのセイフティネッ
  トについても現在、厚労省で法案化に取り組んでいて、上手く転がれば
  来年の通常国会で法律になる。
 

    また雇用保険の加入条件の緩和、今までは半年以上勤めないと入れな
   かったのが、2カ月に縮まった。この財政難の中で勇気をもって変えた
   ものだと思う。今までパート、バイト、そして非正規の方々で雇用保険
   に入れない人が1000万人もいたが、これを急速に少なくしていこうとい
   うことだ。

●ロンドン五輪メダル38個

     それから、これは皆さん余り気が付いていないかもしれないが、今回
    のロンドン・オリンピックで史上最高の38個のメダルという陰には、民
    主党政権になって昨年6月に制定された「スポーツ基本法」がある。50
    年ぶりの改定だが、これは明治以来の国家スポーツ、国家の名誉のため
    に闘って優勝すれば日の丸・君が代で涙、涙という、国家がスポーツを
    育成していくのだという考え方に立った旧スポーツ振興法が全面的に改
    定されて新しいスポーツ基本法ができた。これは、先ほど「新しい公
    共」という言葉が出たが、スポーツも文化であり、しかも極めて公共性
    の高い文化空間であって、それを作っていくのは国だけではなくて、地
    方の役割も明確にし、また企業や個人の努力もあって、皆で協力して創
    造していくのだという基本原理に立った抜本改定だ。
     五輪でメダルが多かったことについて、スポーツ基本法制定と関係が
    あるんだと書いたのは日経新聞だけだったと思う(8月14日付スポーツ
    欄「国の支援さっそく効果」)。実際に大きかったのは東京・西が丘の
    「ナショナルトレーニングセンター」で、これは民主党政権になって初
    めて始まったわけではなく、自民党政権の終わり頃から始まったことだ
    が、こういう方向をより強化していこうというのがスポーツ基本法の趣
    旨だ。メダルを獲得した13競技のすべてがこの敷地内に練習場を持って
    4年間フル活用したことの成果が、メダルの数となって表れた。今まで
    は競技ごとにバラバラで、予算も限られている中、全国を走り回って練
    習場がないか合宿所がないかと探していたが、少なくともオリンピッ
    ク・レベルについてはピタッとその苦労がなくなって、落ち着いてト
    レーニングに取り組むことができた。またマルチサポートセンターは、
    国内でも選手の食事の管理とかマッサージやトレーニングなどいろいろ
    な専門的なサポートをしているが、今度の五輪の選手村にも5億円だか
    の予算で出張所を作ってサポートした。こういうことも五輪の陰にあっ
    た。敢えて言えば、スポーツ基本法を軸とした政権交代効果ということ
    も要素としてあったのだ。

●教育・医療予算の増大

     それから、先ほど「コンクリートから人へ」については鳩山さんから
    説明があったが、税収が全然見込みと違ってしまい、さらに東日本大震
    災も被ってくるという困難な状況の中で、文部科学省の予算は3年間で
    6.7%増、その内の教育予算は9%増となった。大きいのは公立高校の
    授業料無償化。公立だけでなく私立にも就学支援の制度ができて、これ
    は主に都道府県が積極的に推進するということで、相当多くの都道府県
    に広がっている。それから30年ぶりに小中学校の35人学級化という新し
    い方向が打ち出された。今までの40 人学級という決まりは先進国中で
    最低レベルだったが、これを少しでも普通の先進国並みに近づこうとい
    うことで、35人学級へという改定が行われて、教員もこの3年間で1万
    人増えた。

      また医療予算が、先ほど鳩山さんも触れられたが、13.5%増え、その
    結果、医療・福祉介護の雇用が2年間で62万人増えた。日本は、先進国
    では圧倒的に低い4%台の失業率を維持しているが、その大きな要因
    は、この60万人という、今年まで入れるともう少し多いと思うが、医
    療・福祉関係の雇用の着実な増大にある。
      公共事業予算は2年間で何と30%減。八ッ場ダムが止められなかった
    ので「なーんだ、ダメだったじゃないか」ということで話が終わってい
    るけれども、多くのダムが新しい基準で再点検され、建設・計画中止に
    なっていて、ただその同じ基準を適用すると、どうしても八ッ場ダムは
    中止の側に入らなかったということで、やっている人たちには大変残念
    なことだったようだが、今まで通りダムが野放しになっているわけでは
    ない。そういうことを含めて公共事業予算が減って、この政権になって
    初めて、明治以来初めてと言っていいと思うが、国交省の予算を文科省
    の予算が上回った。そういう「コンクリートから人へ」を象徴する成果
    が、少しずつだが着実に積み上がっている。
<前編ここまで>

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