2012年8月23日木曜日

鳩山元総理講演[下]公開します!

いよいよ下篇の公開です。

本日は、質疑応答の後半部分です。
質疑応答は、鳩山元総理と高野塾長とのクロストークの形で、
聴衆とやり取りをしています。

「普天間問題で混乱を起こしたのではないか」という質問に、
「物事を変えるときに混乱はつきものだ。混乱がない解決とは
沖縄県民の心を踏みにじる形で米国の言うとおりにすることなのだ。」
と応答する高野塾長の発言に着目です。

[上編]http://bit.ly/NdClcs
[中編]http://bit.ly/OvuhR3

*出典 「高野孟のTHE JOURNAL」

[下篇]

●既得権との戦い
聴衆2  館山市で市会議員をやっていて、実際に市の予算を見ると国や
 県からのヒモ付き補助金ばかりで、大きい道路やハコモノは補助金で出
 来るが、ちょっとした段差の補修とか、防火水槽とか、小さな工事は補
 助金が付かないので市では実現できない。民主党はヒモ付き補助金はな
 くして一括交付金にすると言っていたのに、未だになくならない。これ
 は可能だと思うが、できていないのは、マニフェストが机上の空論だっ
 たからなのか、あるいは既得権にビビッてしまってできないのか。ま
 た、マニフェストを見た時に、暫定税率の廃止と高速道路の無料化が
 入っていて、両方で4兆円かかるから両方は無理だろうと思った。

鳩山  おっしゃる通り、民主党が既得権の側に立ってしまうように
 なったことが大きい一括交付金については、形の上では前原国土交通大
 臣のところでかなりの部分、一括交付金化したのだが、実はその中の使
 い途が見えない糸で同じ様に繋がれていて、既得権を打破することにな
 らなかった。見た目と中身がまるで違ってしまった。暫定税率と高速道
 路の無料化については、4年間で16兆くらいのお金は、特別会計も合
 わせて200何十兆をもっと精査して詰めた議論をしていないだけで、捻
 出できないわけがない。しかし当時、自分にそこまでの迫力がなかった
 ために、高速道路の無料化は実験段階だけということになってしまい、
 暫定税率の廃止もできなかった。しかし、諦めてはいけないのであっ
 て、特別会計をもっと徹底的にギリギリまで攻めていくべきだ。その力
 量を民主党が持ち合わせていないことが問題だ。

高野  民主党の主体的な問題もあるが、鳩山さんの民主党は一番悪い
 時に政権をとってしまった。08年9月のリーマン・ショックで世界的
 な金融大混乱があって、09年年度半ばの9月に政権をとったが、その
 09年度予算で9兆円の歳入欠陥つまり予定しただけの税収が入って来
 ないということがあって、翌10年度もその流れの中で6兆円、2年に
 わたって計15兆円の歳入欠陥があって、これは何党が政権をとってい
 ようと腰が抜けるような計算違いで、別に鳩山さんに代わって弁解して
 いるわけではないが、誰がやっていても酷いことになっていた。しかも
 そこからようやく這いずるように立ち上がろうとした矢先に東日本大震
 災だ。だから責任がないとは言わないが、客観的に言うと、誰も経験し
 たことがないようなとてつもない状況に──要するに免許取り立てのパ
 イロットが初飛行でいきなり乱気流に突入して錐もみ状態に巻き込まれ
 たような状態だったということだ。そういう面も見てあげないといけな
 いんじゃないか。

鳩山  弁護して頂いて、大変嬉しくて、立場が逆のような気もするが
 (笑い)、ただもう1つ、財務省に対してもっと言うべきことは言わな
 ければならなかった。財務省に言われると「ああ尤もだなあ」と納得し
 てしまう。それで捻出できるところができなかったという面が非常に
 あったと思う。

●原点回帰は可能か

高野  えーと、会場に元日刊ゲンダイ、今はBS-11役員の二木啓孝
 さんが来ているが、彼も週末鴨川市民でここにも毎回来て頂いている。
 政治の先行きについては詳しいと思いますが。

二木  質問は簡単で、もう民主党は見限るべきなのか、まだ頼みにな
 るのかということだ。いま鳩山さんの話を聞いていて、総理になるま
 で、それから総理の時もすいぶんいいことを言っていたんだなあという
 のが正直な感想だ。普天間の問題では、私は「国外、少なくとも県外」
 というのは、凄まじいことを言ったなあと思うし、沖縄の人は本当によ
 く言ってくれたと思っている。なぜ普天間の移転が出来なかったかとい
 うと、平野官房長官以外は動いてくれなかったというお話しがあった。
 私が見る限り、党を挙げて閣僚を挙げてという話は全く聞こえてこな
 かった。実はこれが民主党の限界だと思っている。官僚の厚い壁を民主
 党が総力を挙げてブチ壊すところが見えない。なんか総理が言ってるね
 えというのがほとんどだった。政権をとってどうするかということでは
 バラバラだったという感じがして仕様がない。鳩山さんは何とかしてこ
 の民主党を立て直したいというお話しだったが、野田さんの今の政府を
 見るともう鳩山さんと相当離れている。小沢さんは呆れ返って新党を
 作ってしまった。鳩山さんが頑張っても今の民主党の主流のところを軌
 道修正して原点に戻せないのではないかなあという気がしている。既得
 権益に乗っかってしまった民主党が、選挙の後、自民・公明と組んで連
 立するということになってくる時には、もう我々は民主党を見限って、
 新しい党、政治集団に期待をかけるしかないのかなあと思うが、どう
 か。

高野  もうテレビは帰ったので……。

鳩山  私は最後のチャンスとして、党が原点回帰をして、既得権益と
 戦う集団にもう一度戻そうじゃないかということが出来るとすれば、民
 主党の次の代表選挙しかないのではないかと思っている。その時に、そ
 のことを本気で、懺悔するような気持で、もう一度国民の側に立って戦
 うという候補者が出て、そしてその候補者が党員、議員の内心を揺さ
 ぶって勝利を収めるということになった時に、民主党がもう一度国民に
 信頼される党に戻る可能性がある。その可能性がどこまであるかとなる
 と、二木さんの言うことが正しいようにも思うが、だからといって諦め
 てはならない。先ほど高野さんとも楽屋裏で話していたのだけれども、
 ある意味でこの鳩山が民主党の製造物責任者であるわけで、その責任を
 果たすべきではないか、そう簡単に諦めるべきではないという話を頂い
 た。それもそうだと思うので、たぶん野田政権と執行部の側は、私に党
 員資格停止3カ月ということは、「どうぞ出て行きたいんなら出て行き
 なさい」と意思表示をしているのだと思うが、そう理解しながら私はま
 だ党内に残っている状況だ。ただ、いまお話しがあったように、既得権
 と戦う集団であることを諦めた民主党であることがどのような手段に
 よっても変わらなかったとすれば、その時には私も様々な考え方で行動
 しなければと思っている。

高野  もう1人どうぞ。

聴衆3 今の話を聞いていると、既得権益と戦うことが目的のように聞
 こえるが、本来の目的は国民の生活を守り、向上を促すことが政治の目
 的だと思うが。

鳩山  既得権益と戦わなければ、国民にとっての公平公正な社会は作
 ることはできないということを申し上げている。なぜならば3年前の国
 民の皆さんの不満、不信というのは、ひとえに政官業の癒着の中で甘え
 た人たちが御利益を得て、一方でその外にいる人たちは幸せでない生活
 を強いられているということだった。その不公平感から脱却させていく
 には既得権を壊さなければならない。言うまでもなく、既得権を壊すこ
 とだけが目的ではなく、それを壊すことによって、より公平公正な社会
 を創り出すということが目的であることは論を俟たない。

聴衆3 それによって、結局、混乱を生じて国民の生活を守れないとい
 うことが多数起こった。結局、普天間の問題にしても、混乱を招いたわ
 けだ。

鳩山  国民の皆さんに混乱を招いて、沖縄の皆さんには大変大きな期
 待を抱かせてそれに応えることができなかったということはある。た
 だ、だからと言って既得権との戦いを諦めてはいけないと思っている。

高野  こういうことだと思うんですよ。既得権益というのは、何でも
 いいんですが、えーと、例えば子どもたちに本を読み聞かせるという活
 動を全国に広げようという声があって、それではそういう法律を作って
 予算を来年度からとりましょうということになると、もう早速、その予
 算が出来るか出来ないうちに、もうそのための天下りの協会が出来てい
 る。で、その予算はまずその協会本部に下りて、そこから全国都道府県
 に支部があってそこへ回って行く。それで、その本部の専務理事はじめ
 皆天下りで、その人たちの給与が取られて、都道府県に行くとまた職員
 たちの飲み食いはどうか知らないが必要経費が全部抜かれて、残ったも
 のが現場に届く。その仕組みが、日本のあらゆる分野にわたって巣くっ
 ている。食い物にされているわけだ、国民の税金が。その仕組みを変え
 て、子どもたちのためにこういう使い方をしようよと国の最高機関であ
 る国会が決めたら、出来るだけそれを子どもたちがいる現場に渡したい
 じゃないか。いまその戦いが始まっていて、それが始まれば混乱が起き
 て当たり前だと思う。混乱の何がいけないのかということだ。混乱がな
 ければ明治維新なんて起こっていないのだから。殺人、暗殺、テロ、内
 戦、何でもありの大混乱の中でしか明治維新はあり得なかった。普天間
 問題が混乱しないというのはどういうことかというと、日米防衛官僚が
 決めた通りに粛々としてやって、辺野古の人たちが泣き寝入りして決着
 することが混乱が起きない方法だったわけだ。それを鳩山さんが余計な 
 ことを言って混乱を起こした。混乱のどこがいけないのか(拍手)。

聴衆3 私に言っていると思うので答えさせて貰うが、混乱を期待して
 国民は民主党政権を選んだのではないと思う。もう1つ、政策・理念が
 一致しないのに1つの政党にいるというのは矛盾していないのかどうな
 のか。

鳩山  私の友愛という考え方は、意見が異なっていてもそれを排除す
 るのではなくて、むしろ意見を戦わせる中で議論を尽くして結論を出し
 ていくということだ。国と国でも同じだ、ただ、私は今の野田君に理念
 が果たしてどこまであるのかということがむしろ問題で、理念をお持ち
 ではないのではないか、こういう世の中に自分はしたいんだという発想
 がないことが問題だと思っている。それだけに、次の代表選で民主党の
 軌道を戻すことができるのかできないのか。できなかった時に果たして
 その中に居続けることが適当なのかどうかという判断が必要になって来
 るかとは思うが、まずは最後の試みとして私が考えている民主党の原点
 を思い出すチャンスとして使うことができるのではないか。

●アメリカにノーを

高野  もう1人かな、時間的に。はい、どうぞ。

聴衆4 鋸南町から来た。常時駐留なき安保だが、現在の思いやり予算
 が出続ける限りは、美味しいところに蝿が集まるように、結局出て行か
 ないのではないか。さらに、アメリカが日本を守ると言うが、今回の竹
 島、尖閣の問題で分かる通り、当事者同士で話をしてくれということ
 で、アメリカという国は、自分の美味しいところは飛びつくけれども、
 そうじゃないところはそっちでやってくれということではないか。さら
 にオスプレイについては、米本土でもハワイでも反対が出て訓練をやら
 ない。日本だけ、この狭い土地で、住宅のないところなどほとんどない
 中で、圧倒的な住民が反対している。なのに、先ほどからお話しに出て
 いる官僚が御無理御尤もで受けてきて、日本国民をだまくらかして何と
 かしてしまうということになっている。そこで、鳩山さんがアメリカに
 対してはっきりノーと言えるのか。是非、鳩山さん頑張ってやってほし
 い。

鳩山  私はアメリカに対して言うべき時にはノーと言うのが真の友情
 だと思う。イラクの戦争に日本が加担したときに、私はノーと言った
 が、小泉さんが自衛隊を派遣してしまった。明らかに、今それは歴史的
 に間違いであったと判っているが、日本政府はその誤りを認めていな
 い。しかし私共はアメリカが間違った行為をするときにはノーと言うべ
 きだ。オスプレイは、低空飛行の訓練を日本の中で行うことには大変大
 きな危険を伴うことは間違いなく、その配備には私はノーという立場
 だ。私がアメリカに東アジア共同体構想を伝えた時に、アメリカが大変
 敏感に反応し、それに加えて普天間の移設問題でこの鳩山はアメリカに
 対して敵対的ではないかと思われたのだろう。その結果が、私の立場を
 大変辛いところに導いたと指摘されている。だからと言って、アメリカ
 の意思に何でも従う日本であっては決してならないと思っており、その
 ような態度は今後も貫いていく(拍手)。

高野  では時間もオーバーしているので、第1部を終わらせて頂く(拍手)。



参考資料→ http://www.the-journal.jp/contents/takano/shasin027_1.jpg

以上で下篇の公開を終了します。
メディア記事では現れない、元総理の考えがかなり踏み込んだところまで述べられています。
ご意見・ご感想お待ちしております。

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